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Profond Vois

 

​★

どこで迷込んだかも分からない。

そもそも今まで何をしていたかも思い出せない。

気づけば少女は深い森に迷い込んだ。

 

少女は

暗く冷たい森の中を恐る恐る歩いていく。

微かに差し込む光を辿って。

まるで人のように蠢く木々や草花。

人の気配がしないのに手入れのされた洋館。

シルクハットを被りお茶を啜る兎。

きっとこれは夢なのだろう。

露に触れた手の冷たさを感じながら少女はそう思った。

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